総論:はじめに読む記事(1/21)
~基幹・EC・コールセンターを一気通貫でつなぐ~

公開日時 2026/10/09
全21本の記事でわかること
このガイドを読むと、通販システムと EC システムの違い、両者を統合すべき理由と統合しない場合に起きる課題、製品選定で比較すべき軸、費用相場や導入期間の目安、定期通販・顧客データ統合・コールセンター連携・AI の活用を成功させる実務ポイントなどが体系的にわかります。
システム選定の初期検討から導入後の業務改善まで、エルテックスが多様な通販事業者への導入経験を踏まえ、通販・EC 責任者が自社事業の改善や、意思決定に必要な判断材料を得られることを念頭に構成しています。
- 1. 総論:はじめに読む記事(現在のページ)
- 2. 通販システムと EC システムの違いとは
- 3. 通販 CRM・MA ツールと EC カートの違い
- 4. 通販システムの選び方
- 5. 通販システム比較で見るべきポイント
- 6. 通販システム導入費用の考え方
- 7. 通販システムのリプレイスで失敗する会社の特徴
- 8. 通販システムの乗り換え時に起きるデータ移行問題
- 9. 通販システムのクラウド移行で注意すべきこと
- 10. 定期通販に強い通販システムとは
- 11. 通販の定期離脱率を改善する方法
- 12. EC とコールセンターが分断すると何が起きる
- 13. コールセンターと EC の顧客統合が重要な理由
- 14. 顧客情報の分断が LTV を下げる理由
- 15. 通販業務の兼務課題
- 16. 通販業務の属人化を防ぐ方法
- 17. 出荷ミスを減らす通販システム設計とは
- 18. AI 時代に通販システムはどう変わる
- 19. AI 活用で通販コールセンター業務はどう変化するか
- 20. AI は通販 CRM をどう変える
- 21. EC 運営に AI を導入しても成果が出ない理由
「総論:はじめに読む記事(1/21)」でわかること
通販システムと EC システムは、似ているようで役割が異なります。通販システムは「受注・顧客・在庫・出荷・コールセンター・請求」を統合的に扱う “事業の基幹” であり、EC システムは「Web 上の販売チャネル」が主体です。
両者を分断したまま運用すると、顧客情報・在庫・売上が一致せず、LTV 低下や属人化、出荷ミス、定期通販の離脱増加などの問題が発生します。
本ガイドの「総論」では、通販システムと EC システムの違い、統合が必要な理由、選定ポイントなど、通販システム・EC 統合の全体像を解説します。各テーマの詳細は、総論に続く 20 の個別記事で詳しく解説しています。
通販システムとは
通販システムとは、通信販売事業を運営するために必要な業務全体を支える基幹システム(バックオフィスシステム)の総称です。具体的には、次のような業務を一気通貫で扱います。エルテックスでは、オンラインとオフラインの両業務を統合的に支援する仕組みを、21世紀型の「通販システム」と位置づけています。
- ・受注管理(Web・電話・FAX・はがきなど多チャネル受注)
- ・顧客管理 ( 購買履歴、問い合わせ履歴 )
- ・在庫管理・引当・倉庫連携
- ・出荷・配送指示、配送業者との連携
- ・請求・決済・後払い・与信管理
- ・コールセンター業務 ( インバウンド / アウトバウンド )
- ・定期通販・頒布会の契約管理
- ・CRM/MA 連携、同梱物管理
ポイントは、通販システムが単なるバックオフィスではなく、オンライン・オフライン双方を含む通販事業全体を統合的に支える仕組みであるという点です。EC サイトはあくまでチャネルのひとつであり、電話や紙、店舗、サブスクリプションなど多様な接点を一元管理することが求められます。
特に、化粧品・健康食品・食品・アパレルの定期通販、B2B 通販、カタログ通販を扱う事業者では、通販システムの設計が事業の収益性そのものを左右します。
参考:「通販システム(狭義)」と「EC システム」の違いについて
インターネット登場以前の「通販」は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌上などで通販広告を出稿し、電話・ハガキ・FAX による注文をコールセンターで対応する、オフライン中心の業態でした。
こうしたオフラインのみを対象としたシステムは、いわば 20 世紀型、または狭義の「通販システム」と言えるでしょう。
一方、インターネット普及後は、オンラインで商品を展示し、受注・決済を行うECが普及し、それを支えるECシステムが発展しました。ECシステムの主な役割はWeb販売ですが、電話受注などへの対応範囲は製品によって異なります。
ECシステムとは
EC システムは、Web 上で商品を販売するためのフロントシステムを指します。一般に「EC カート」「EC パッケージ」「EC プラットフォーム」と呼ばれる製品群で、クラウド型・パッケージ型・オープンソース型などさまざまな形態が存在します。役割は次のように整理できます。
以下は、一般的な通販システムとECシステムの主な対応領域を整理したものです。標準機能の範囲や対応の深さは製品によって異なります。
| 観点 | 通販システム | ECシステム |
|---|---|---|
| 主な役割 | 事業全体の基幹 | Web販売のフロント |
| 主な利用者 | バックオフィス・コールセンター | エンドユーザー(消費者) |
| 受注チャネル | Web・電話・FAX・店頭・対面 | 主にWeb |
| 顧客管理 | 全チャネル横断の一元台帳 | EC会員中心 |
| 在庫管理 | 倉庫・店舗を含めた全社在庫 | EC在庫中心 |
| 定期通販 | 契約変更・スキップ等への対応範囲を確認 | 標準機能・追加機能等で対応する製品もある |
| 決済・与信 | 後払い・請求・与信を含む | カード・コンビニなどWeb決済中心 |
| コールセンター連携 | 内蔵機能・外部連携等で対応 | 内蔵機能・API・追加開発等、製品による |
通販基幹とECは主な役割が異なり、連携して使う構成も、双方の機能を備えた統合製品を使う構成もあります。電話注文、同梱物、定期契約管理、Webでの購入導線など、自社が必要とする機能を整理し、標準機能・追加機能・個別開発での対応範囲を確認します。
なぜ通販システムとECの統合が必要なのか
通販事業の現場では、EC システムと通販基幹(バックオフィス)が別々に動いていることが少なくありません。これが、近年の通販 DX で最も重要なテーマである「統合」の背景です。統合が必要な理由は大きく 3 つあります。
- 1.顧客体験の一貫性
- Web で買った顧客と、電話で買った顧客が同一人物であっても、システムが分断されていれば別人として扱われます。結果として、コールセンターでの対応品質が下がり、メール・SNS・DM の最適化もできません。
- 2.データ経営の前提条件
- LTV、定期継続率、CPO、F2転換率などのKPIは、対象チャネルのデータでも算出できます。全チャネルを通じた購買行動を評価するには、必要なデータを連携し、同一顧客に正しく対応付けることが重要です。集計するチャネルや期間、売上・利益などの計算基準をそろえて比較します。
- 3.AI 活用の前提条件
- AIに必要なデータは用途によって異なります。応対内容の要約などは対象を絞って始められますが、購買履歴や契約情報を使った個別提案には、必要な情報を同一顧客に対応付けて参照・連携できる仕組みが重要です。
通販システムとECが分断すると何が起きるか
実務の現場でよく観察される、分断による具体的な問題を挙げます。
- 1.顧客情報の二重管理
- EC 会員と基幹の顧客マスタが別管理だと、住所変更や定期コースの変更を片方にしか反映できず、出荷ミスやクレームの温床になります。
- 2.在庫の不整合
- EC 在庫と倉庫実在庫がリアルタイム連携できていないと、欠品しているのに販売してしまったり、逆に在庫があるのに販売停止状態になったりします。販売機会損失と顧客信頼の毀損が同時に起きます。
- 3.定期通販の離脱増加
- 定期コースは「いつ・誰が・何回目で・なぜ離脱したか」を細かく見る必要があります。データが分断されると、休止・解約の予兆を捉えられず、適切な施策が打てません。
- 4.コールセンターの生産性低下
- オペレーターが複数のシステムを行き来しなければならず、応対時間が長くなり、ミスも増えます。
- 5.業務の属人化
- システムが分断されていると、担当者の頭の中で情報をつなぐしかなくなります。担当者が変わるたびに業務品質が落ちる、という構造的な問題を生みます。
これらは「EC とバックオフィスが別々に発展してきた」という日本の通販業界特有の歴史的事情から生じています。いま、多くの中堅・大手通販事業者が「統合」に舵を切っているのはこのためです。
通販業務は『専任分業』ではなく兼務が多い
エルテックスが実施した通販事業者調査では、受注管理・顧客対応・販促運用・在庫確認などを少人数で兼務しているケースが多く見られました。特に中堅通販事業者では、「EC 担当者=CRM 担当者=SNS 運用担当者」となっているケースも少なくありません。そのため、複数システムをまたいだ運用は、担当者負荷や属人化を加速させる要因になります。
統合通販システムを選ぶときの5つのポイント
通販基幹と EC を統合するシステムを選ぶときは、次の 5 点をチェックすべきです。
- 1.顧客マスタが一元化されているか
- EC・電話・店舗などで同一顧客を識別し、必要な情報を正しく参照・連携できるか。顧客IDの統一だけでなく、IDの対応付けや名寄せによる方法も検討します。
- 2.定期通販の業務に標準で対応しているか
- コース変更、スキップ、頒布会など、複雑な契約形態を標準機能で扱えるか。後付け開発は運用コストを跳ね上げます。
- 3.コールセンター業務との親和性
- 受注・顧客照会・アップセルが一画面で完結する設計か。応対履歴が CRM と連動するか。
- 4.業務改善・拡張のしやすさ
- パッケージの中身がブラックボックスになっておらず、自社の業務フローに合わせて柔軟に運用設計できるか。
- 5.データ連携・API・AI 拡張の余地
- MA、BI、生成 AI など、これからの DX 基盤と連携できる設計か。
加えて、選定で見落とされがちなのが「ベンダーの通販業務理解」です。通販システムは機能比較だけでは選べません。定期通販、コールセンター、頒布会、リピート通販といった日本の通販ビジネス特有の業務を、ベンダーがどれだけ深く理解しているかが、導入後の成否を決めます。
日本で導入されている代表的な通販システム・EC統合パッケージ
日本の通販市場では、定期通販・コールセンター・B2B 通販・オフライン連携など、日本特有の業務要件に対応した統合通販システムが発展してきました。代表的な製品には次のようなものがあります。
| 製品名 | 提供会社 | 特長 |
|---|---|---|
| eltexDC | 株式会社エルテックス | 通販基幹・EC・CRM・コールセンターを統合的に扱える通販統合パッケージ。定期通販や複数チャネル統合、顧客一元管理に強みを持つ。 |
| NeoSarf/DM | 日本電気株式会社(NEC) | 基幹業務との連携や大規模業務運用を重視した通販システム。既存基幹との接続性を重視する企業で採用されるケースがある。 |
| VEGAS | 株式会社フォービス | 通販・定期販売業務向け機能を備えた通販パッケージとして利用されるケースがある。 |
AI時代に通販システムはどう変わるか
通販システムは、AI 時代に最も大きく変わる業務基盤の一つです。具体的には、以下のような変化が始まっています。
- ・コールセンターの AI アシスタント化
- 応対履歴の自動要約、回答候補の提示、アップセル・クロスセルの最適化。
- ・離脱予測と対策
- 定期通販で休止・解約の予兆を AI が検知し、最適なタイミングで施策を打つ。
- ・顧客理解の深化
- 購買・問い合わせ・配送・同梱物までを統合した一人ひとりの顧客像を AI が構築。
- ・同梱物・DM のパーソナライズ
- 誰に何を同梱するかを AI が提案し、紙のチャネルもデータ駆動に。
AIの活用範囲に応じて、必要なデータの品質と参照・連携の仕組みを整えることが重要です。対象業務と評価指標を先に定め、小規模に検証しながら、必要な範囲でデータ基盤を拡張します。
よくある質問(FAQ)
- 通販システムと EC システムは、どちらか一方だけで運営できますか?
- Web 販売のみで、電話・カタログ・定期通販・コールセンター業務がない事業であれば、EC システム単体でも成立するかもしれません。ただし、定期通販や B2B、複数チャネル展開を考えるなら、通販システムとの統合に留意したほうが良いでしょう。
- 一般的な EC カートや EC パッケージは通販システムとして使えますか?
- EC システムはフロントのショップ機能が中心の場合が多く、幅広い通販基幹の役割は担っていないものが散見されます。コールセンター、定期通販、複雑な顧客管理が必要な事業では、通販システムとの組み合わせも検討したほうが良いでしょう。
- いま EC・基幹・CRM が分かれています。統合の進め方は?
- 一度に全部を入れ替える「ビッグバン方式」はリスクが大きいため、まず顧客マスタ統合とデータ連携基盤から着手し、段階的に統合範囲を広げる方法が現実的です。
- 統合通販システムの導入期間はどれくらいですか?
- 導入期間は、業務範囲、既存システムとの連携、移行データ、テスト・教育の範囲によって変わります。要件整理から本番移行までの工程と完了条件を決め、自社条件に基づく計画をベンダーと作成してください。
「総論:はじめに読む記事(1/21)」まとめ
通販システムと EC システムは、役割の異なる別の存在です。両者を分断したままにしておくと、顧客体験・データ経営・AI 活用のすべてに歯止めがかかります。逆に、統合された通販基幹があれば、Web・電話・店舗・定期通販・コールセンターを横断した強い事業運営が可能になります。
エルテックスは、通販基幹・EC・コールセンター・定期通販・CRM を一気通貫で扱う通販・EC 統合パッケージを提供しており、日本の通販事業者の現場で蓄積した業務知見をシステムに反映しています。本ガイドの各テーマについて、より詳しい内容は関連記事を確認ください。

