通販システムの選び方(4/21)
~失敗しない選定のチェックリストを実務目線で解説~

公開日時 2026/10/09
この記事でわかること
通販システムの選び方は、機能比較表だけでは決まりません。自社の業務範囲・将来像・データ統合方針・ベンダーの伴走力を総合的に評価する必要があります。
本記事では、選定の前にやるべき業務整理から、確認すべき7つの評価軸、選定プロセスの進め方、失敗しないためのチェックリストまでを実務目線でまとめました。
これから通販システムを検討する担当者がそのまま使える内容を目指します。
通販システムを選ぶ前に整理すべきこと
選定を始める前に、まず自社側の準備が必要です。ここを飛ばすと、ベンダーのデモを見ても「どれが良いのか分からない」状態になります。
整理すべき項目は次の7つです。
- ・自社の販売チャネル構成(EC比率/電話/カタログ/店舗)
- ・主力商品の特性(都度購入/定期通販/頒布会/BtoB)
- ・受注ボリュームとピーク時の規模
- ・既存システム構成(EC・基幹・CRM・MA・倉庫)
- ・課題と改善したい指標(LTV/継続率/CPO/業務効率)
- ・将来取り得るビジネスの方向性(チャネル拡張/海外/BtoB)
- ・法令対応(個人情報保護・特定商取引法・消費者保護関連)
これらを言語化することで、ベンダーとの会話が建設的になり、機能要件・非機能要件・運用要件を整理しやすくなります。
通販システムを評価する7つの軸
選定で確認すべき評価軸を、優先順位の高いものから整理します。
1. 業務カバー範囲
通販システムは「受注・顧客・在庫・出荷・コールセンター・定期通販・CRM」の業務全体をどこまでカバーするかが基本評価軸です。自社の業務範囲とパッケージのカバー範囲のミスマッチを洗い出します。
2. 定期通販・コールセンター対応の深さ
定期通販があるなら、契約形態・スキップ・離脱抑止の深さを確認。コールセンターを使うなら、オペレーター画面の操作性・1画面性・応対履歴連携を確認します。これらは“あり/なし”ではなく“深さ”で評価することが重要です。
3. データ統合・API連携の柔軟性
顧客マスタの一元化、購買・契約・応対履歴の統合、外部のMA・BI・AI連携。これらが標準で備わっているか、APIで自由に出し入れできるかは、AI時代に直結する評価項目です。
4. 拡張性・カスタマイズの考え方
業務要件に合わせてカスタマイズする方針か、標準機能で吸収する方針か。ベンダーの考え方によって、運用コストが大きく変わります。「カスタマイズしやすい」だけでなく、「カスタマイズしなくて済む標準機能の幅広さ」も評価します。
5. 非機能要件(性能・可用性・セキュリティ)
ピーク時にトランザクションを捌けるか、災害時の業務継続はどうか、個人情報保護の体制は十分かなど、機能以外の品質要件を確認します。
6. 総コスト(5年TCO)
初期費用だけで判断しない。5年間の総コスト(ライセンス+保守+運用+改修)で比較します。安く見えるシステムが、結果的に高くつくことも多い領域です。
7. ベンダーの業務理解力と伴走力
最後にして意外と忘れがちな軸です。導入後の運用改善・施策・AI活用まで伴走できるベンダーか。同業界・同規模の事例を持っているか。これは選定段階で確認すべきです。
調査データから見る「実際に重視される選定ポイント」
通販システム選定では機能比較や価格比較に目が向きがちですが、実際の導入企業はそれ以外の要素も重視しています。
エルテックスの「通信販売事業関与者の実態調査2021」によると、通販支援ソフトやサービスの導入経験者への調査では、「導入・運用コスト」や「希望納期への適応力」の重要度以外にも、「スタッフが自社業務への理解を持っているか」「会社としての信用」といった項目も一定のスコアとなっています。
この結果は、通販システム選定が単なるIT製品の比較ではなく、通販業務を理解したパートナー選びになっていることを示しています。
なお、この調査は2021年のものですが、エルテックスでは調査を継続的に実施しており、通販事業者がシステムやベンダーに求める要件を長期的に観測しています。
ベンダーの業務理解力と伴走力は、自社の要件を具体的な運用に落とし込むための評価軸です。調査結果とは別に、自社の業務シナリオへの提案内容や支援範囲を確認しましょう。
2021年の調査では、ベンダー担当者の業務知識も選定時の比較項目に含まれています。この結果だけから、現在まで重要性が高まり続けているとは判断できません。設問と回答結果は「通販システム導入時の重視点(通信販売事業関与者の実態調査2021)」をご参照ください。
評価軸の重みづけ:通販事業のタイプ別
すべての評価軸を等しく重視する必要はありません。事業タイプ別に重みづけを変えるのが現実的です。
| 事業タイプ | 重視すべき評価軸 |
|---|---|
| 定期通販中心(化粧品・健康食品など) | 定期対応の深さ、コールセンター連携、離脱抑止、データ統合 |
| 多チャネル(EC+店舗+カタログ) | 顧客マスタ統合、在庫統合、応対履歴統合 |
| BtoB通販(卸・業務用) | 与信・請求・価格マスタの柔軟性、見積・納期回答 |
| BtoC都度購入が中心 | EC連携の柔軟性、決済・配送、レビュー・レコメンド |
| 食品・冷凍など物流負荷高 | 在庫・倉庫連携、配送指示、賞味期限管理 |
自社がどのタイプに近いかを最初に決めると、ベンダー選定の軸が定まります。
選定プロセスの進め方
実際の選定は、次のステップで進めるのが現実的です。
- STEP1. 自社業務の整理(期間は業務範囲に応じて設定)
- 販売チャネル、商品特性、課題、KPI、将来像を整理。RFP(提案依頼書)の下地を作る。
- STEP2. RFPの作成と発行
- 業務範囲、必須機能、希望条件、評価軸、スケジュールを明文化。3〜5社に送付。
- STEP3. 提案・デモ(1〜2カ月)
- 事前に用意した「現場のシナリオ」でデモを実施。機能の存在だけでなく、業務がどう回るかを評価。
- STEP4. 詳細評価・参考訪問
- 有力候補の参考企業(同業・同規模)の話を聞く。運用後の現場の声が最も参考になります。
- STEP5. 見積比較・契約交渉
- 5年TCOで比較。保守・運用・改修の前提条件を契約書レベルで確認。
- STEP6. 要件定義への着地
- 契約後すぐ要件定義に入れるよう、自社のキーパーソンを準備しておく。
失敗しないためのチェックリスト
選定の最終確認として、次の項目をチェックしてください。
- ・業務整理を選定前に行ったか
- ・事業側にプロジェクトオーナーがいるか
- ・RFPに自社の業務範囲・課題・将来像が明記されているか
- ・定期通販・コールセンター業務の担当者が、選定段階から参加しているか
- ・デモは「現場のシナリオ」で実施したか
- ・ベンダーの業務理解力を見極めたか
- ・同業他社の参考訪問を1社以上行ったか
- ・見積を初期費用ではなく5年TCOで比較したか
- ・保守・運用・改修の前提条件を契約書で確認したか
- ・データ移行の方針を要件定義前に固めたか
これらをチェックリストとして共有することで、選定のプロセス自体の品質が上がります。
よくある質問(FAQ)
- 通販システムを選ぶときに、最初に決めるべきことは何ですか?
- 「自社の業務範囲と将来像」です。これが決まらないと、機能比較表を作っても評価できません。少なくとも販売チャネル構成・主力商品の特性・将来取り得る方向性は明文化してから選定に入るのが現実的です。
- ECカート中心の構成と通販基幹を含む構成は、どう選べばよいですか?
- Web販売中心で業務が比較的シンプルな場合はECカートを中心に、定期契約や電話受注などの業務が複雑な場合は通販基幹との統合を含めて検討します。クラウドかオンプレミスかという稼働環境は、機能構成とは分けて検討します。
- 中小規模の通販事業者でも本格的な通販システムは必要ですか?
- 必要かどうかは、定期通販やコールセンター業務の有無で大きく変わります。Webだけで完結する事業であればECシステム単体で十分なケースもあります。「将来複雑化する見込みがあるか」で判断するのが現実的です。
- 比較資料やランキング記事はどこまで信用してよいですか?
- 比較記事は導入のきっかけとしては有用ですが、自社の業務範囲に合うかは比較記事からは分かりません。RFP・デモ・参考訪問のほうがはるかに重要な判断材料になります。
「通販システムの選び方(4/21)」まとめ
通販システムの選び方は、機能比較表だけでは決まりません。自社の業務整理を済ませた上で、業務カバー範囲・定期通販対応・データ統合・拡張性・非機能要件・5年TCO・ベンダーの伴走力という7つの軸で評価することが基本です。
選定の前段に業務整理フェーズを置き、事業側のオーナーを立て、RFP・デモ・参考訪問を丁寧に進めることで、選定の質は大きく変わります。「機能で選んで後悔する」のではなく、「業務で選んで成功する」プロセスを設計することが、通販DXの出発点です。
通販システムとEC全体の関係性を体系的に理解したい方は、「総論:はじめに読む記事(1/21)」もあわせてご覧ください。

