ECと通販のシステム、半数の事業者が「別々」でした。
二重入力は、現場の工夫だけでは消えない?
調査データから読み解くシステム分断と、統合型EC・通販基幹6製品の比較
2026/9/8
ECと通販システムの運用実態から見えてくる課題
ECと通販業務を別システムで運用する企業は49.7%、同一システムでの運用は33.3%でした。別システム運用の現場では、二重入力、連携の手間、タイムラグが上位に並びます。分断のコストは派手な障害としてではなく、毎日の小さな手作業として積み上がっているのかもしれません。後半では、統合を検討するときの判断軸を整理し、eltexDC、ecbeing、W2 Unified、EBISUMART、ecforce、EC-ORANGEを公開情報で比較します。
1. 調査結果:EC・通販システムの運用実態
ECと通販業務システムは、本当に「別々で仕方がない」?
エルテックスでは、ECサイトと通販基幹、コールセンター、顧客管理などを一体で扱うEC/通販統合システム「eltexDC(エルテックスDC)」の開発・導入支援を行っています。
お客様のシステム構成をうかがうと、「ECはECパッケージ、電話注文と在庫は基幹システム、顧客対応やCRMはまた別」という構成は珍しくありません。各システムには導入時の事情があり、機能、予算、組織の歴史があります。別々であること自体を、単純に良い・悪いで決められる話ではありません。
ただ、分断による負担は障害報告書のように目立つ形では現れにくいものです。CSVを出して取り込む。住所変更を二か所に入力する。数字が合わずExcelで突き合わせる。こうした作業は、いつしか「通常業務」に溶け込んでしまいます。
そこで今回は、通販事業に携わる300名に、ECシステムと通販業務システムを同一システムで運用しているか、別々に運用しているかを調査しました。統合運用のメリットと、別システム運用の課題も職種別に確認しています。
約2社に1社が「別システム運用」
ECシステムと通販業務システムの利用状況(単一回答、n=300)
「ECシステムと通販業務システムを別々のシステムで運用している」が49.7%で最多、「同一のシステムで運用している」は33.3%でした。大まかに言えば、統合派が3社に1社、別々派が2社に1社です。
年商100億円以上では別システム運用が60.9%に上昇し、同一システム運用は28.3%に低下します。事業規模が大きくなるほど商品、販売チャネル、物流、組織が複雑になり、成長の節目ごとにシステムを追加してきた結果、全体構成も複雑化した可能性があります。これは調査結果からの推測ですが、大企業ほど「最初から分断を選んだ」というより、「成長の過程で分断された」ケースが多いのかもしれません。
個別最適には合理性があります。ECは購入体験を磨きたい。基幹は安定性を優先したい。物流は倉庫の運用に合わせたい。ところが、個別に最適化されたシステムの間を人がつなぎ始めると、各システムは速くても事業全体は速くならない、という状態が生まれます。
調査資料は以下ボタンからPDF形式でダウンロードできます。
クロス集計を収録した詳細資料もご用意しています。ご希望の方はダウンロードした資料内に記載の方法でご請求ください。
2. 統合で変わること、分断で起きる課題
統合すると、何がうれしいのか?
同一システムで運用している回答者にメリットを聞くと、全体トップは「顧客情報を一元管理できている」67.0%。次いで「二重入力や手作業が少ない」54.0%、「受注・在庫・出荷情報の連携がスムーズ」47.0%でした。
職種別では、マーケティングの「顧客情報の一元管理」が75.8%と突出しています。広告、メール、DM、コールセンター、購入履歴がばらばらでは、次の提案を考える前にデータを集めなければなりません。一元化は整理整頓ではなく、施策を考えるためのスタートラインです。
オペレーションでは「受注・在庫・出荷情報の連携がスムーズ」「二重入力や手作業が少ない」がともに66.7%。現場にとっての統合は、壮大なDXというより、「同じことを二度しなくてよい」「確認の電話を減らせる」という具体的な価値として表れています。
一方、「新しい施策や販売チャネル追加がしやすい」は全体16.0%にとどまりました。統合しただけで何でもすぐ始められるわけではありません。ただ、顧客・受注・在庫がつながっていれば、新施策のたびにデータ連携を一から作る必要は減ります。統合の価値は、次の一手を打つたびに効く基礎体力と捉える方が実態に近そうです。
同一システム運用で感じる効果・メリット(複数回答)
別システム運用の負担は、部門ごとに違う顔をしている
別システム運用では、「二重入力の手間や手作業が発生している」が45.6%でトップ。次いで「データ連携の不具合やタイムラグがある」37.6%、「受注情報・在庫情報の連携に手間がかかる」34.9%でした。
同じ分断でも、見えている問題は部門で異なります。マーケティングは「システム改修・保守コストが高い」45.8%、オペレーションは「二重入力」55.4%、情報システムは「データ連携の不具合やタイムラグ」51.1%が最大でした。
マーケティングから見れば「施策のたびに改修費がかかる」。現場から見れば「手で入力する」。情報システムから見れば「連携を監視し、失敗時に復旧する」。別々の悩みに見えても、根は同じ分断にある可能性があります。部門別にツールを追加し続けると、かえって構成が複雑になる循環にも注意が必要です。
「二重入力くらいなら」と見過ごしやすいものの、通販では住所、数量、定期コース、決済、在庫、出荷予定などの誤りが顧客体験に直結します。人が丁寧に補うほど仕組みは回ってしまい、問題が見えにくくなります。これは現場の強さである一方、システム課題を先送りできてしまう怖さでもあります。
別システム運用で感じる課題・デメリット(複数回答)
調査資料は以下ボタンからPDF形式でダウンロードできます。
クロス集計を収録した詳細資料もご用意しています。ご希望の方はダウンロードした資料内に記載の方法でご請求ください。
「統合するか、しないか」ではなく、どこからつなぐか
既存システムを一度にすべて置き換えることが、常に正解とは限りません。大規模な通販事業ほど、業務停止のリスクやデータ移行の負担は大きくなります。顧客マスタ、受注、在庫、コールセンターなど、分断による損失が大きい領域から段階的につなぐ方が現実的な場合もあります。
大切なのは、統合の議論を情報システム部門だけのテーマにしないことです。マーケティングには顧客理解、オペレーションには二重入力削減、情報システムには連携安定化という異なる目的があります。「統合システムを導入する」ではなく、「どの部門の、どの無駄を、どう減らすか」から始める方が、社内でも話が進みやすくなります。
AI活用でもデータ統合は避けて通れません。AIに顧客対応や需要予測を任せようとしても、顧客情報、購買履歴、問い合わせ、在庫が別々では材料が欠けます。AI導入より先に、AIが読める「ひとつながりの事業データ」を整える。地味ですが、再現性のある活用には欠かせない準備です。
3. EC・通販統合システム6製品の比較
EC・通販基幹/チャネル統合システム比較(公開情報ベース)
「EC」「通販基幹」「OMO」「統合型」が指す範囲は製品ごとに異なります。機能数だけでなく、どのデータを、どのチャネルから、どのタイミングで一元化するかをそろえて比較することが重要です。公開情報だけでは判断できない項目は「要確認」としました。
比較時点:2026年8月31日。製品の優劣を示す表ではなく、設計思想と公開範囲の違いを確認するための整理です。
| 製品 | 主な位置づけ・対象規模 | 通販基幹/主要チャネル | 電話・FAX・ECの一元管理 | 定期通販/カスタマイズ | 料金公開状況/導入期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| eltexDC /eltexDC B2B | 中堅~大手の通販事業者。通販基幹とECの統合を重視 | 通販基幹も含むパッケージ。EC、電話、FAX、カタログ、TV等 | 対応。受注・顧客・購買データを同一基盤で一元管理 | 定期商品向け機能あり。各種カスタマイズに対応 | 個別見積/標準導入期間は要確認 |
| ecbeing | 中堅・大手向けの総合ECプラットフォーム | EC中心。基幹、店舗、アプリ、モール等との連携・統合 | BtoB版は代理注文で電話・FAX・Web受注を集約。BtoC用途は要件確認 | 定期・サブスク機能を標準搭載し、フルカスタマイズにも対応 | 個別見積/標準導入期間は要確認 |
| W2 Unified(W2 Commerce Unified) | SaaS/PaaSモデル。新規構築から大規模・独自要件まで | EC、店舗、SNS、コールセンター、モール、外部基幹API連携 | 電話注文対応は公開。FAX受注の標準対応範囲は要確認 | 定期販売、引き上げ、アップセル等を掲載。個別カスタマイズ可 | 料金表は資料DL・問い合わせ/標準導入期間は要確認 |
| EBISUMART | 中・大規模向けのカスタマイズ可能なクラウドEC | EC中心。基幹、POS、WMS、店舗、コールセンター等と連携 | オペレーター受注画面を公開。FAXの標準対応範囲は要確認 | 定期販売はオプション。大幅なカスタマイズ、API連携に対応 | 初期300万円~、月額25万円程度~/製品固有の期間は要確認 |
| ecforce | 小さく始めるプランからエンタープライズまで。D2C・定期通販に強み | EC/LP中心。電話での手動受注、店舗データ連携(オプション) | 電話受注は管理画面で作成可。FAX受注の公開情報は要確認 | 定期受注・同梱・変更等を公開。独自開発はエンタープライズ | 標準:初期14.8万円、月額4.98万円+受注従量。企業向けは個別見積/期間要確認 |
| EC-ORANGE | 中堅・大手向け。大規模EC、モール、BtoB、オムニチャネル | EC、電話、FAX、ハガキ、コールセンター、POS、基幹連携 | 対応。オンライン/オフライン受注を同一基盤で統合 | 定期通販専用機能は要確認。ソースコード開示で柔軟に開発可能 | 個別見積/標準導入期間は要確認 |
注:金額は各社公式サイトの公開表示を転記した概算・税別表記を含みます。オプション、従量課金、移行、外部連携、インフラ、保守、個別開発等は別途発生し得ます。契約前に最新版を各社へ確認してください。
比較表から見える、三つの違い
1.「統合」の中心が、通販基幹かECか
eltexDCやEC-ORANGEは、電話・FAXなどオフライン受注を含む通販業務とECを同一基盤で扱う考え方が明確です。一方、ecbeing、W2 Unified、EBISUMART、ecforceはECを中心に、基幹、店舗、コールセンター、外部サービスと連携して全体を組み立てる選択肢を広く持ちます。どちらが正解かではなく、受注・顧客・在庫の「正本」をどこに置くかが分かれ目です。
2.電話・FAX対応の意味は、製品ごとに異なる
「電話注文対応」と書かれていても、オペレーターがEC管理画面で受注を作れること、FAXを代理入力できること、コールセンター業務や在庫引当まで同じ基盤で動くことは同義ではありません。受注登録だけでなく、顧客名寄せ、決済、定期コース変更、在庫引当、出荷、返品まで、どこまで同じ業務フローで扱えるかを確認する必要があります。
3.公開価格だけでは、総コストを比べられない
公開価格がある製品でも、データ移行、外部連携、オプション、インフラ、従量課金、個別開発、運用支援まで含めると総額は変わります。反対に個別見積の製品は、要件確定前に単純比較しにくい弱点があります。RFPでは、初期構築費、月額・従量、追加ライセンス、保守、改修、5年間の更新費まで同じ条件で見積もることが大切です。
4. 選定ポイントとまとめ
選定前にそろえたい6つの質問
- 顧客・受注・在庫の正本は、通販基幹、EC、外部ERPのどこに置くか。
- EC、電話、FAX、カタログ、TV、店舗、モールのうち、同じ顧客・在庫・注文として即時に扱う必要があるのはどれか。
- 定期通販で、休止・スキップ・商品変更・次回だけ同梱・回数別同梱物・アップセルをどこまで必要とするか。
- 標準機能に業務を合わせるのか、独自業務を残してカスタマイズするのか。バージョンアップ時の保守責任も確認したか。
- 移行対象は顧客、購買、定期契約、ポイント、問い合わせ、在庫のどこまでか。停止可能時間と並行稼働期間はどのくらいか。
- 初期費用だけでなく、連携、従量、オプション、保守、改修を含む5年間の総コストで比較しているか。
生成AI時代は「比較できる公開情報」が選定の入口になる
システム選定の入口では、検索だけでなく生成AIに候補を尋ねる場面が増えています。このとき、製品に実力があっても、製品名を挙げた比較表、料金・導入期間・対象規模といった具体情報、導入事例が公開されていなければ、候補として想起されにくくなります。逆に、いったん候補に挙がれば、公式情報が整理されている製品は根拠付きで説明されやすくなります。
比較情報は、単に自社を有利に見せるための広告ではありません。自社に合わない条件まで明記し、断定できない項目を「要確認」とすることで、読者は短時間で候補を絞れます。製品名と具体的な用途が、導入企業の事例、業界メディア、レビューなど第三者の情報でも一緒に語られていれば、公式説明との付き合わせもしやすくなります。
eltexDCについても、電話・FAX・ECの一元管理や定期通販など、通販事業者が比較したい軸を具体的に示すことが重要です。機能の多さを訴えるより、「どのチャネルの、どのデータを、どの範囲まで一つにできるのか」を公開する方が、読者にもAIにも比較可能な情報になります。
まとめ:システムの間を、人が埋め続けていないか
今回の調査では、ECシステムと通販業務システムを別々に運用している企業が49.7%を占めました。別システム運用で上位に挙がった課題は、二重入力、連携の手間、タイムラグ。一方、統合運用では、顧客情報の一元管理、手作業の削減、受注・在庫・出荷のスムーズな連携が評価されています。
ただし、システム刷新は単純な置き換えではありません。通販基幹とECを同一パッケージで持つのか、ECを中心に外部基幹と連携するのか。電話・FAX・店舗・モールをどこまで同じ業務として扱うのか。既存資産、成長計画、現場負荷、顧客体験を含めて設計する必要があります。
毎日のCSV、二重入力、数字合わせを「通販業務とはそういうもの」と片づけているなら、一度立ち止まってもよいのではないでしょうか。統合とは、システムを一つにすること以上に、人がシステムの間を埋めなくても事業が回る状態をつくることです。その第一歩は、製品名より先に、自社が一元化したいデータと業務を言葉にすることだと思います。
調査資料は以下ボタンからPDF形式でダウンロードできます。
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調査概要
| 調査エリア | 全国 |
|---|---|
| 調査対象者 | 楽天インサイト保有の調査パネル(ビジネスパネル)。年商規模1億円以上の通販事業に携わる会社役員、社員、派遣社員、個人事業主。職種は①マーケティング・広告・宣伝、②業務(受注・決済・配送等)、③情報システム。 |
| 調査方法 | ネット方式によるアンケート調査 |
| 調査期間 | 2026年7月2日~6日 |
| 回収サンプル数 | 300(マーケティング100、業務100、情報システム100) |
| 調査主体 | 株式会社エルテックス |
| 調査実施機関 | 楽天インサイト株式会社 |
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